ヘッドホン

   ヘッドホンを買ってみた。2万を超えるものだったので、子は高すぎると反対していたのだが、買ってみて聞かせてやると、あまりの音の良さに驚き、値段にも納得していた。
  きっかけは、昔にいつの日か高級ヘッドホンを買ってやろうと思っていたのだが、それを忘れていたところ子がウォークマンのヘッドホンの音質が悪いというので、これの買い替えを考えているうちにこちらが本気になっていた。
   普段はあまり物に執着しないようにしているのだがオーディオ機器にはこだわりの魔性がある。はまった人が次々と遡及して機材を揃え代えていくように、あまりにこだわれば電源コードからコンセントまで遡って変更することとなる。ヘッドホンのことを調べているうちに、ヘッドホンビギナーという言葉さえ見つけ出した。こんなものに初心者、上級者があるのだろうかと思うが、上級者という人のレビューを読めば、ワインのソムリエのごとき音の表現がなされていることがある。
   オーディオは音楽を楽しむためにあるのだが、音楽そのものよりも、音楽に含まれている細部の音を見つけ出す機材を揃えることに満足し、どれだけ良い音を再現できるのかと、楽しむ所が変わってきているのではないかと思える。
   とはいえ、つい最近味わったのだが、交響曲の第4楽章のよいところで電話がかかって来たときのがっかり感は相当なものがある。
   人は面白いものだと思う。自分の楽しみのために必死に努力し、楽しみ自体を忘れながらに、何かに没頭をしている。この忘れることにこそ、面白さがあるのかもしれない。