好みの問題

子 パパって変わってるよね。
父 みんな変わってそれでいい。って、もみ上げの手話アナウンサーが言ってたよ。
子 それって、みんな違って、みんないい。で金子みすずさんの詩じゃないの。
父 そうかな。みんな違ってみんないいと言って、済ますのも問題はあるね。好みの問題とか、価値観の違いで、皆が違っていいと、普遍的な価値観ってできないよね。みんな違っていいなら、道徳が成立しなくなってくるから。好みの問題で、物事を還元してしまうと、みんな違ってみんないいになっちゃうから。
子 人に迷惑をかけないなら、みんな違ってみんないいんじゃない。
父 人に迷惑をかけないという点で道徳を作ると、困っている人を助ける必要はないし、イジメは見てみぬふりをしていいし、大きく言ったら大量虐殺があっても助ける必要はないよね。
子 人を殺したらダメじゃない。
父 殺すのはダメだけど、それを見ているのは人に迷惑をかけていないからね。どこかで、みんなと同じところがないと、人と違っていいとも言えないよ。金子さんは、そこを分かってみんな一緒の風潮に対してのアンチテーゼとして、一つのレトリックとして言っているんだけど。みんな違っていい、かつどこかでみんな一緒でいいと解釈しないと
子 詩を解釈するのはナンセンスなんだけど。
父 みんな違って、みんないいんじゃない。そういう詩の解釈についての問題も、解釈を許さない排他性を排除する規則が、みんな違ってみんないいになるんだと思うけど。ナンセンスが成立するには、あんたの価値観を押し付ける必要があるからね。そこは、ナンセンスの共通理解が必要なんだと思うけど。