めも

  人は、何故、悪いことをしてはいけないのか。うちに永井均さんの本があるので、子が読んで面白いと言っていた。
  本では、悪いこと自体はなくて、世の中に不都合なことが悪いとされているという説明があったと思う。
  私の考えでは、むしろ悪いという語自体に悪いという概念が含まれている。循環論法になるんだけど。カントの定言命題風に言うと、仮定なしに悪いということ、どんなものであれ悪いという評価がされると、それは禁止や否定の意味を持つ。「悪いことをしてはいけない。」これが、「もし悪いことをするべきである。」となると、それは悪いことでなくなっている。泥棒を職業にする人は、泥棒をすることが良いことになる。悪いは、この点で相対的だ。泥棒を職業にしていて、泥棒をしないことは悪いことになるだろう。
  悪いことは、語自体にそういう否定の意味があるから自動的に、論理的にそうならざるを得ない。
  では、嘘をついてはいけないではどうだろうか。嘘をついて良いか悪いかも、場合によりけり。この場合、悪いことのように直接的に否定が帰結するわけではない。
  何故、嘘をついてはいけないのか。