めも

    自転車で、河川堤防の上を走る。堤防から見ると、大きなビルがいくつも見える。あの窓の一つ一つに、人が働いたり、人が住み暮らしがある。それが、ざっと見ただけでも何万人分もあるのだろうと思う。一方では、こせこせと背中を張り合わす様に建つ老朽化した一軒家が並ぶところ。ビルの最上階に住む人もいれば、その足元に暮らす人もいる。どちらも、私には見えないがその人の生活がある。
    私自身も、そんな見えない人の一人なのだが、見渡す限りにどこかに人がいるが、私と関係しているわけでもない。今、そこで私一人がいなくなっても誰も気がつかないだろう。そういう私が、この何万人がいる世界、広い世界の中に視点として存在している。この視点が、無くても世界は相変わらず存在するだろう。自分が取るに足りない一人だと思う。
    多くの人が互いにそういう存在なのだと、有名でもなくつまらないことに苦心して暮らしている。消えてもほとんどの人が気がつかない。多少、有名な者でも何年かすれば忘れられる。