アウフヘーベン

子 今度、生徒会でいじめについて話あうサミットというのがあるんだけど、皆で意見を言いあって、それで終わり、他人の意見については質問も何のツッコミもしてはいけないと言われているんだ。面白くないよ。

父 そういうスタイルの会議もあるよ。意見に意見すると収拾がつかなくなるからね。

子 互いの意見について、話合わないなら話合いの意味がないんじゃない。質問もできないなんて、互いに質問をしてより良い意見をまとめるのが話合いなんじゃないかな。生徒同士の対話もなしに大人が最後にでてきて、「いじめはいけませんね。」と言ってまとめて終わりじゃ。はじめから結論が決まっているじゃないか。

父 テーゼとアンチテーゼをぶつけて、より高みを目指す話し合いのことを弁証法と言います。ちなみにテーゼは、主題やテーマくらいに思ってください。主語と述語で意味のある文章であればテーゼになります。そのテーゼに反対する意見がアンチテーゼです。試験にでるかも知れないの覚えておいて下さい。
弁証法的手法、解明云々とかと言いますと大概のことは煙にまけます。よく分からない意見にはやたらと弁証法的何とかがついています。意見陳述のはじめに、「今回はいじめについての弁証法的解明をとらない会議ですがうんぬん、」とでも言ってみて下さい。場が凍りますから。
家での会話は、弁証法的なスタイルで対話、討議するように話しているけど、この対話というのは、より良い意見の形成を目的にしていないと、熱中しすぎると相手の意見を潰すことに目的が変わってしまうから注意です。相手を尊敬するというルールが必要です。

子 倫理の教科書にでてたな。何と言う哲学者だったかな。国語の問題にも弁証法って出てきたんだけど、その時は何のことか分からなかったよ。

父 弁証法は問題を難しく言うためにとても便利な言葉です。そして哲学者はヘーゲルです。テーゼとアンチテーゼをぶつけ合ってより高みを目指すことをアウフヘーベンと言います。

子 そのしゃべりかた気になるな。

父 アウフヘーベンなどと言うと先生気取りになりたくなります。これで講義終わりです。